設立の趣旨

わが国の総人口は、戦後、一貫して増加を続けてきましたが、2008年頃をピークに減少傾向に入っています。一方、高齢者の数は増加の一途を辿っており、2025年にはいわゆる団塊の世代のすべてが75歳の後期高齢者となり、医療・介護需要も爆発的に拡大することが見込まれています。

現在、わが国では国民の約8割が病院で死を迎えています。2012年現在で、年間約126万人が亡くなっていますが、2030年以降は年間の死亡者数は160万人を超え、このままでは医療提供体制に大きな混乱を引き起こすと指摘されています。

地域包括ケアシステムは、まさしくこのような超高齢社会における私たち国民の生き方・亡くなり方について正面から向き合う仕組みですが、全国的な取り組みについてはまだ緒についたばかりでもあります。そして、2014年度から開始された病床機能報告制度、そしてその延長線上にある地域医療構想は、これまでの医療計画の焼き直しではなく、医療・介護をはじめとして、地域住民の生活全般にわたる将来のあり方を方向づける、いわば都道府県総合計画の色彩を帯びざるを得ません。

医療・介護は、制度上は全国一律で運営されているとはいえ、サービス提供の現場では地域固有の風土、文化を背景にしています。地域医療とは、こうした環境を踏まえたものであり、それぞれの地域にふさわしい医療・介護のあり方については、地方自治体をはじめ、医療・介護の関係者など、当事者こそが議論し、実現に向けた取り組みを行うべきものです。

そして、望ましい地域医療・介護を、将来にわたって支えるためには、地域経済の活性化が不可欠であり、医療・介護は地域経済と共時的に活性化が果たされるべきものでもあります。
これらを前提にしたとき、2025年以降を見据えた医療介護のあり方等については、医療介護関係者ばかりではなく、地方銀行をはじめとする経済界、都道府県や市町村などの関係自治体、医療介護の研究を進める大学など産官学の連携のもと、これらが一体となりより裾野を広げ、広範に議論を展開すべきものでもあります。

一方、日本全体を俯瞰すると、医療・介護等を支える社会保障給付費は、高齢化の影響もあり拡大の一途を辿っています。その財源はいまだ過半を保険料で賄っているとはいえ、税の投入額は年々拡大しています。そしてその多くが公債で賄われており、発行済み公債の対GDP比は、すでに第二次大戦時を超える状況になっています。

このような国家的な危機感も私たちは共有し、国民すべてがより積極的に社会活動を行い、将来にわたる医療・介護の安定的な提供体制についてそれぞれの地域において議論を深め、実践に向けた取り組みができるよう支援すると共に、地域経済の活性化の実現に向け、本フォーラムを設立いたしました。

平成27年5月 設立発起人 一同

設立発起人(50音順)

  • 組織名・肩書は当時のもの
  • 天本 宏(医療法人財団天翁会 理事長)
  • 安藤 高朗(医療法人社団永生会 理事長)
  • 尾形 裕也(東京大学政策ビジョン研究センター 特任教授)
  • 岡留 健一郎(済生会福岡総合病院 院長)
  • 加納 繁照(社会医療法人協和会 理事長)
  • 亀田 隆明(医療法人鉄蕉会 理事長)
  • 小池 由久(株式会社日本経営 名誉会長)
  • 島崎 謙治(政策研究大学院大学 教授)
  • 高木 安雄(慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科 教授)
  • 田村 学(医療法人学縁会 理事長)
  • 西澤 寛俊(社会医療法人恵和会 理事長)
  • 野中 博(医療法人博腎会 理事長)
  • 信友 浩一(元九州大学大学院 教授)
  • 服部 万里子(長寿社会文化協会 理事長)
  • 浜田 淳(岡山大学医歯薬学総合研究科 教授)
  • 藤澤 功明(株式会社日本経営 代表取締役会長)
  • 伏見 清秀(東京医科歯科大学大学院医療政策情報学分野 教授)
  • 古川 貞二郎(社会福祉法人恩賜財団母子愛育会 会長)
  • 水田 邦雄(シルバーサービス振興会 理事長)
  • 宮島 俊彦(岡山大学客員教授)